欧米型

世の中には、2種類の人間がいる。



乾いた耳垢を持つ人間と、湿った耳垢を持つ人間。



日本人は前者が多く、欧米人は後者が多いという。
俺は後者のため、耳かきを使った事が無い。
代わりに綿棒を使うのだが、これが何とも、なんせベタベタしているため、いまいちきれいに取れる感じがしない。
周囲の人間が耳かきで耳をほじくり、仕上げにあの綿毛みたいなやつでフワフワやっているのを見ると、さぞスッキリするのだろうなと羨ましく思う。


だが、ただそれだけだ。
別にそれで人生の何かが決まる訳でもない。
そう思っていた。今までは。



昨日の朝、母親との会話。


「アンタ耳垢ベタベタしてるよね」

「そうだけど?」

「わたしもそうなんだけど、今朝の新聞に『湿った耳垢の人は体臭が強い』って書いてあったよ。なんか汗腺が問題らしくて、それで中には手術で汗腺取っちゃう人もいるんだって」



いやいや母さん、朝っぱらからアンタは何を言い出すのか。
汗腺取るのはまずかろう。死ぬよ。



もちろん問題はそこではない。



『湿った耳垢の人は体臭が強い』



晴天の霹靂である。
ベタベタ耳垢が欧米人に多いという統計からも、その事実は容易に想像できる。
なるほど、俺は欧米型だったのだ。


体臭をフェロモンと言い張ってきた俺だが、アメリカンダンディーばりの濃ゆいフェロモンを放出していたかと思うと若干凹む。
どうせなら、体臭なんかじゃなくて顔を欧米型にして欲しかった。